【対談記事】(前編)なぜパルコデジタルマーケティングはXRに取り組むのか?ーPDM 岡田 泰宏 × PDM 我妻 拓朗
2023年春より、パルコデジタルマーケティングXRプロジェクトが始まりました。このプロジェクトで立ち上げ期より活躍されている社員の岡田 泰宏さん、我妻 拓朗さんにインタビューを行いました。今回は、XR企画・制作事業に取り組み始めるまでの背景や理由、担当されたXR案件の誕生秘話などについて語ってもらいました。お2人からどんな言葉が紡がれるのか…。
Written by Kojima(広報担当、趣味は山登りと国内旅行)
読み終わるまで:12分・最終更新日:2023年11月15日・0時00分
CONTENTS
■きっかけは、社内の新規事業創造プロジェクト
■XRで面白いことをやりたい、思わず人に拡散したくなる仕掛け作り
岡田 泰宏(株式会社パルコデジタルマーケティング 執行役員 兼 開発部部長)
1998年株式会社パルコに入社、2002年より株式会社パルコ・シティ(現、パルコデジタマーケティング)に出向、のち転籍。20年以上に渡り、Webコンサルティング、オムニチャネル化支援、デジタルサイネージ等店頭DX支援など、パルコ・JFRグループ、SC、小売業のDX支援事業に従事。現在は、開発部にてPICTONAを中心とする自社プロダクトの開発を推進。2023年よりXR企画・制作事業をスタート。
我妻 拓朗(株式会社パルコデジタルマーケティング 開発部 メタバースプロジェクト担当)
米どころ新潟生まれ。大学ではメディア表現文化学を専攻しつつ、好きなファッションを研究。卒業後は大手アパレル企業に入社。店舗を転々とした後、より広く・より多くのお客様に関わり、お役に立てる場所を求めて、2019年にパルコデジタルマーケティングに入社。商業施設だけでなくリテイルクライアントも含め、幅広くWebサイトの構築・コンサルティング・支援を担当。現在は、開発部にてXR企画・制作事業のメタバースプロジェクトを担当。
■きっかけは、社内の新規事業創造プロジェクト
ーーでは、早速ですが、今回XR企画・制作事業という取り組みを開始した背景、理由やきっかけとなった出来事について教えてください。
岡田 泰宏(以下、岡田):PARCOでは、5年ほど前から店頭の顧客体験の拡張を目指し、XRの活用に取り組んできていました。改装工事中の渋谷PARCOの仮囲いにXRでインスタレーションを行い、仮囲いという無機質で非生産的なものを、人が見に来るアート展示に変えた「AKIRA ART of WALL」というのが一番最初の取り組みだったと思います。その後、2019年にリニューアルした渋谷PARCOの吹き抜けにゴーグルを20台くらい並べ、常設のインスタレーションを展示したり、XRのクリエイターをインキュベートするためのアワード、NEW VIEWアワードを開催し、今年で6回目を迎えています。
以降は、ギャラリーの展示を拡張するXRや、ギャラリーだけではなく、通常は展示を設置できない共有空間でアート展示を行ったり、さらには、上野PARCO_yaでは、大量のパンダが交差点に降ってくるXRを作成し、もはや建物の大きさや場所という物理的制約を超えて、現実的には不可能なことを実現したり…。そうやってショッピング空間だったり、体験の拡張ということを長く取り組んできました。
ーーなるほど。パルコは「ショッピング空間と体験の拡張」をテーマに、長きにわたり取り組んできたのですね。
岡田:はい。ただ、XR制作ってかなりコストがかかるんです。パートナー企業に頼むとすると、数百万単位のコストがかかる上に、なかなか、直接的な費用対効果を生むのが難しいんです。結局コストを抑えるために、パルコ社員が手弁当で制作をしている状況でした。
そこで、パルコデジタルマーケティングの新規事業創造プロジェクトの発案で、社内に在籍するWebエンジニアやデザイナーがXRコンテンツの制作技術を身に着けることで、グループ内のXR制作を受託すると同時に、「XRを活用したいけどどう使ってよいか分からない」とか、「コストが高くて頼めない」というパルコデジタルマーケティングのSC・小売クライアントに対してサービス提供ができるんじゃないか?っていうのがXR事業スタートのきっかけです。今年の春から始めました。
我妻 拓朗(以下、我妻):そうですね。きっかけとしては、いま岡田さんのお話しにあった22年度、パルコデジタルマーケティングの新規事業創造プロジェクトです。当社としても、長らくWeb制作だったり、自社のCMSの販売やサイネージなどの店頭ICTを主な生業とはしていたんです。
けれども、コロナ禍を経て、業界だったり消費者の様相っていうのも大きく変わってきたこともあり、新しい事業の必要性が増している状況ではありました。事業創造プロジェクトは、社内の有志で活動していて私も参加していたのですが、そこで生まれた事業の1つが、今取り組んでいるXR領域における事業でした。
ーー社内の有志活動の時代を経て、本格的にXR事業が立ち上がったのですね!もともと我妻さんはXRに興味があったのですか?
我妻:はい。自分の話をすると、学生時代からアニメやゲームが結構好きでした。そこで表現されている現実とデジタルが掛け合わさったような世界観だったり、バーチャル空間の中をあたかも現実世界のように体験する姿にあこがれがありましたし、これから盛り上がっていきそうなXR領域にとても関心があったので、事業の立ち上がりにあたり、手を挙げさせていただきました。
■XRで面白いことをやりたい、思わず人に拡散したくなる仕掛け作り
ーー岡田さん、我妻さんが担当されたXRサービスについて、誕生秘話、苦労話や印象に残っているエピソードなどあれば教えてください。
我妻:これまではPARCOで行われるイベントの一部として、XRコンテンツを実装してきました。特に印象的だったのは、初めての案件でもあった仙台PARCOのサウナイベントでのXRです。仙台駅前の野外空間に、XRでイラストなどを広範囲に展開したものになりまして、施設の大きさに捉われることなくコンテンツを出すことが出来るのはXRの1つの特徴かと思います。
ーー駅前の空間ということで、かなり広範囲でのXR制作だったかと思います。このお仕事の話をいただいたきっかけなどはあったのですか?
我妻:元々PARCOでは、当社が取り組む以前からXRで様々な仕掛けをしていたんですけれども、我々の方でXRのサービスが立ち上がったということで、まずは制作部分を一緒に取り組めないかと相談していました。ちょうどその時期に予定していた、仙台PARCOのサウナイベント内でのAR制作のお話を頂いたのがきっかけです。
その時、制作スキルの習得っていうところも並行して行っていたので、大変ではあったんですけど、グループの知見のある方からアドバイスをいただきながら作り上げました。イベント終了後もARユーザーの方から次回開催を望む声が上がったのでホッとしました。ただ、楽しんでもらえたユーザーの方がいる一方で、まだまだXRに馴染みのない方が大多数という世の中であると思っています。コンテンツ自体もそうですし、体験設計の部分で、ハードルが低くてわかりやすいものを模索していく必要性は感じましたね。
ーーまだまだXRコンテンツを広められる伸びしろがあるということですね。岡田さんの印象に残ったXRサービスはありますか?
岡田:僕もやっぱり一番最初に制作した仙台PARCOのARですね。また『トウホグサウナ大市!!サ勤交代』という素材がすごく良くて!今とても人気のあるサウナの一大イベントを、ARで盛り上げたいっていう、担当者の方からの相談からスタートしました。この時点では、具体的にどんなARを作るかは決まっていなかったんです。
ーーそうなのですね!どのような感じで、具体的なコンテンツ内容を決定していったのですか?
岡田:何かXRで面白いことをやりたい!という共通認識だけあって、現地でブレストしていく中で、やはりARでやるんだったら現実では絶対やれないこととか、ぶっ飛んだことをやった方が面白いよねと、ワイワイ言いながら面白おかしくアイデアを出していって。
まず、「パルコが仙台駅前をジャック!」という強いワードを使いたいということで、さまざまなキャラクターが参勤交代のように大行進するARを作ることは、割とすぐに決まりました。それと、自分自身が“整いすぎて”昇天してしまった「フライングトトノイビト」に変身しちゃう顔はめテンプレートを作って、思わず知り合いに拡散したくなっちゃう仕掛けも作成しようという話になりました。
ーーエピソードを聞いただけで、楽しい雰囲気が伝わってきます。AR制作にあたり、苦労された事はありましたか?
岡田:苦労話というか、ここは注意が必要だと思ったことが2つあります。1つ目は、ARは通常のWebとは違い、現実の場所・空間に実際に当てはめることで体験が完了するため、その場所・空間に合わせた設計を行わないといけないということです。仙台駅前は巨大なペディストリアンデッキで繋がっているのですが、事前にその全ての通路をスマホのアプリを使い、5人がかりで計測をしました。また、制作したARを、実際のデッキの上を歩いているように見えるか位置を調整する必要がありました。
そして2つ目は、ARを体験していない人にとっては、体験者が何をしているのか全く分からないということです。『 フライングトトノイビト 』のほうはインスタテンプレートで手軽だったということもあり、期間中6,000回程度のインプレッションがあり、800人弱に利用されましたが、『 サ勤交代 』は期間中の利用数が200回に届かず、やはりARということでものが見えているわけではないし、利用するまで何が体験できるのかわからないので、体験までの導線設計をしっかり作る必要があるということと、また、ペディストリアンデッキは常時通行人が多く、スマホを掲げるのはハードルが高かったため、そのあたりを加味した体験設計が必要だと感じました。
ーー実際に制作していく中で、ARを使ってもらうための導線作りもかなり重要になってきますね。
我妻:コンテンツがちゃんとできているかの確認で、現地に行ってスマホをかざして確認することがあるんです。仙台PARCOのときもそうですけど、過去2回くらい変な人がいると警備員さんに苦情が入り、何やってるんですかと声をかけられた話があります(笑)
岡田・我妻:(笑)
我妻:撮影時には、「ただいま撮影中」のような看板など、自作でちょっと作った方が良いかもしれないです。
岡田:むしろ「AR制作中、〇日から公開します」のように、宣伝も兼ねてQRコードをTシャツに印字したりしても良いかもしれませんね!
終始和やかな雰囲気の中、XR事業立ち上げの背景や実際の事例を交えたエピソードについて熱くお話しいただきました。後編では、今後の展望やお2人にとってXRとは何なのか、をテーマにインタビューさせていただきました。次回もぜひお楽しみに!!
≪後編に続く…≫