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2024-05-15

AR・VR・MR・XRって何?

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唐突ですが、PDM XRにも使われている『XR』という言葉の意味をご存じでしょうか?
また、『AR・VR・MR』これらの意味をご存じでしょうか?

 

今ではよく目にするようになった言葉ですが、実は語る人によって様々な定義がされる非常にややこしい言葉たちです。

 

例えば、ある人はデバイスの違いに着目し、またある人は技術的違いや表現されるものの違いで分類したりしています。ハードとソフト、当然この観点が変わると定義自体が変わってくるので混乱を招くことになるわけです。

 

最近界隈の人と話しているときに話題になったこともあり、改めてそれぞれの歴史を調べてみました。
今回は言葉の生まれた背景や単語の意味からアプローチして、AR・VR・MR・XRとは何かを考えてみたいと思います。
あくまでこの記事も、様々な意見がある中で私の個人的な解釈が多分に含まれます。

 

■書いた人
我妻 拓朗
株式会社パルコデジタルマーケティング 開発部 XR担当 クリエイティブディレクター

 

■AR(=Augmented Reality)って何?

ARの概念の登場

ARの概念は今から100年以上前、『オズの魔法使い』の著者で知られるライマン・フランク・ボーム氏の小説『The Master Key』の中にすでに登場しています。

 

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物語の中で主人公の少年は、「Daemon of Electricity(直訳:電気の悪魔)」から様々な電気テクノロジーのプレゼントを授かり冒険します。しかしそれらは人類では、または物語の中の文明では扱えないものになっていき…。

といった話です。

 

電気の悪魔からのプレゼントの中に"character marker"という眼鏡型の道具があります。この眼鏡をかけると、人の額に性格を示す文字が浮かび上がります(善人にはG、悪人にはE、などなど)。

 

まさしく今でいうARグラスのようなものであり、ファンタジーの本の世界でARの概念が垣間見えることとなりました。

 

『AR』という言葉の誕生

その後、コンピュータグラフィックの発展に伴い技術的にARと言えるものが生まれていきました。ただ技術的に近しいものがあっただけでそれ自体に名前はありませんでした。我々はある事象や概念に対して、名前が付けられて初めてそれを認識できます。

 

ARを意味する「Augmented Reality(拡張現実)」という言葉が生まれたのは1990年のことです。
ボーイング職員であったトム・コーデル氏は、当時すでに開発されていたヘッドマウントディスプレイ(HMD)上に情報を表示する技術を、ケーブル作業をするための支援ツールとして応用しました。彼はそれを「Augmented Reality」と名付け、現在までその名前が使われるに至ります。

 

当時のデバイス・インフラ環境では、産業分野を始めとする一部の特殊な用途でしか使用できず、一般に普及するまでは時間を要しました。その後、スマートフォンの登場により一般を対象とする商業・興行分野でもARは再び注目されるようになり、様々なアプリケーションが生まれ受け入れられるようになりました。

 

ARとは何か
ARを説明するときによく「スマホやタブレット機器を通した体験」というものを目にします。トム・コーデル氏の時代、AR誕生時はHMDで体験するものでありましたが、このような普及時のデバイス状況から、あるいはその後に登場するMRとの差別化から、「スマホやタブレットの機器を通して」というデバイスによる分類の定義が生まれたのだろうと思います。

 

ただ、歴史を遡ると本来ARはデバイスが何かに関わらず、「現実空間に仮想オブジェクトを重ねて表示するもの」というごくごくシンプルな説明になるのではないでしょうか。

 

画像PDM制作AR事例:リアル空間に出現する海の生き物たち(松坂屋静岡店様)

■VR(=Virtual Reality)って何?

VRの概念の登場

VRの概念が最初に登場するのはARと同じく小説の中からです。
スタンリイ・G・ワインボウム氏による1935年の短編SF小説『Pygmalion's Spectacles』の中に、五感の仮想的な体験を記録してゴーグルに投影・体験するシステムを搭載した魔法の眼鏡なるものが登場します。

味覚・嗅覚はさておき、現在のVRゴーグルに近しいものがこの作品で描かれました。

 

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『VR』という言葉の誕生
AR同様、VRという言葉がいつ生まれたのか調べてみると2人の人物が浮かび上がりました。
1人目は初めて「Virtual Reality」という言葉を初めて使った芸術家アントナン・アルトー氏で、驚くことに1932年に彼が書いた小説「錬金術的演劇」にその言葉が登場します。

 

このアルトー氏より3年後の1935年のワインボウム氏の小説が概念の登場とされているのはなぜなのか?
彼が用いた「Virtual Reality」は言葉は同じでも現在と異なる概念で使われていたため、現在に通ずる概念を生み出したのは、ワインボウム氏とされているようです。

 

現在に使われている意味で「Virtual Reality」という言葉を使いだしたのはコンピュータ科学者のジャロン・ラニアー氏と言われています。彼はその言葉を自身のIT分野で援用しHMDとグローブを開発してビジネスを行うことで、現在まで用いられるVRの概念を作り上げました。

 

Virtual=仮想?
VRの言葉の意味については調べれば調べるほど難解で、答えが分からなくなります。
なぜなら”Virtual”という言葉にはVR(仮想現実)で使われる「仮想の」という意味とは別に、「(実体はないが)実質上の」という意味があるからです。「仮想の」というのは、先の「(実体はないが)」の部分が抜き出されたようにも見えます。

 

そして、本来VRに対して使われる意味は後者の「実質上の」という意味が正しいという主張が少なくありません。
ちなみに、日本バーチャルリアリティ学会は、”Virtual”を「仮想の」と翻訳するのは誤りであると明言しており、実質的・本質的という意味を正としています。
※ただ、以降も便宜上”Virtual”を「仮想」と訳して使用します。

 

であるならば、VRは「(実体はないが)実質上の現実」と訳せます。言い換えれば「現実空間ではないが実質的に現実と変わりないもの」となります。

 

VRとは何か
哲学的な方向に進みそうなので、このあたりで私たちの理解しやすい形で考えてみると、「現実空間ではない=全てデジタルで表現」「実質的に現実と変わりないもの=現実に近い知覚ができる」とも言えそうです。

 

現実に近い知覚とは何か。それは、リアルな距離感・スケール感で周囲や物体が見え、音も距離や方向によって変わり、コントローラーを通して空間に干渉し触って機器からフィードバックを得る、といったことが挙げられます。

すなわちVRは、「全てがデジタルで表現された空間で、見渡せたり、触れたり、話したりといったリアルな知覚ができるもの」と言えるではないかと思います。

 

「全てがデジタルで表現された空間」でも一見VRのような気がしますが、TVゲームやCGの映像はVRとは呼びません。リアルな知覚が伴ってVRと言えるでしょう。

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PDM制作VR案件:仮想空間での抽選コンテンツ(心斎橋パルコ様)

 

■MR(=Mixed Reality)って何?

MRの様々な解釈
AR・VR・MRの中で、恐らく最も解釈が分かれるのがMRではないかと思います。

 

「ARとVRを合わせたもの」という説明がされたりしますが、様々な論調がある中でどうやら「現実空間に仮想オブジェクトを重ねる」という要素は共通しているようです。それだけではARと同じですが、ARと違う点で「複数人の同時体験」「触れたり操作できる」という説明が加わったりしているようです。

 

はたしてMRを説明するにはそれらで十分なのでしょうか。

 

MR概念の登場

MRは複合現実と呼ばれ、初めてその概念が世に出たのは比較的新しく1994年のことです。
トロント大学のポール・ミルグラム氏と大阪大学の岸野文郎氏による論文「A Taxonomy of Mixed Reality Visual Displays」の中で、『Reality–Virtuality continuum(現実と仮想の連続体)』と呼ばれる分類手法が提唱されました。

 

そこでは、完全な現実(Real Environment)と完全な仮想(Virtual Environment)の間にある領域、つまり現実と仮想の間(現実と仮想は含まない)ではあるが連続して区別のつかない領域のことを指してMRと呼ばれています。

 

MRとAR・VRの関係性

MRを前述の通り「現実と仮想の間ではあるが連続して区別のつかない領域」とすると、現実空間にデジタル情報を重ね、複数人の同時体験や触れるなどの操作ができるという始めに紹介した説明は、MRで出来ることではあっても、正しくそれ自体を表しているのではないと言えます。
また、完全な仮想(VR)は含まないので、単純に「ARとVRを合わせたもの」ということでもないようです。

 

岸野氏らが提唱した『Reality–Virtuality continuum』を図にすると[図1]のようになります。

 

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図1

 

Real Environment(RE):完全な現実空間
Augmented Reality(AR):拡張現実
Augmented Virtuality(AV):拡張仮想
Virtual Environment(VE):完全な仮想空間 ※VE=VR

 

これを見ると完全な仮想空間は我々が言うVR(仮想現実)と置き換えることができ、それと完全な現実空間の間にあるAR・AVの領域を指してMRと呼ぶことが分かります。加えて、このMRの領域は現実と仮想の割合によってグラデーションのようになっており、現実に近い側ではAR、仮想に近い側ではAVがあります。

 

MRとは何か

「MRとは何か?」という問いに戻ると、それはこれまでの内容から「現実空間に仮想のオブジェクトを重ねたもの、もしくは、仮想空間に現実のオブジェクトを重ねたもの」ということになります。
前半はARの説明と同じですが、MRはARを含むので当然です。AR・VR・MRは、同じ階層で並列に語られるものではなく、少なくともMRはAR・VRよりも抽象的な上位概念として捉える必要があります。

 

抽象の概念がゆえ、それを無理に説明(具体に)しようとすると話者によって差ができてしまいます。
AR・VR・MRを同じ分類や切り口で説明するのは困難で違和感が生まれてしまうので、先の図のように関係性に注目してそれぞれの領域を捉えると良いかもしれません。

 

■XR(=Extended Reality/Cross Reality)とは

XRは、AR・VR・MRの総称であり、言わば包括的概念です。
XRを具体的に説明するとなれば、それはすなわちAR・VR・MRの説明になるとも言えます。

 

AR・VR・MRの分類は時に曖昧になってしまうことも少なくないですが、XRという言葉はそれらの曖昧さもそのまま包括し表すことができるという点で有用です。

 

XRは「AR・VR・MRの総称かつ包括するもの」です。以上、とてもシンプルです。
※最近ではXRに含むものでSR・DRなども現れていますが、本記事では触れません。

 

■まとめ

AR・VR・MR・XRとは何かついて、背景や意味から考えてきました。
最後にまとめると以下が私の見解です。

 

AR:現実空間に仮想オブジェクトを重ねて表示するもの
VR:全てがデジタルで表現された空間で、見渡せたり、触れたり、話したりといったリアルな知覚ができるもの
MR:現実空間に仮想のオブジェクトを重ねたもの、もしくは、仮想空間に現実のオブジェクトを重ねたもの
XR:AR・VR・MR(・SR・DR)の総称かつ包括するもの

 

冒頭に記載した通り、あくまで私の個人的な解釈であるということを、改めてお伝えいたします。

 

■XR活用のご相談はPDMまで

PDMではXRを活用した企画立案から制作まで承ります。
「こんなことがしたい!」「興味はあるけれど、どんなことができるの?」など、お気軽にご相談ください!

 

 

Written by:Azuma